すんでのところ/坂本瞳子
 
や紫や
合う鍵はないのではないだろうか
そんな気さえしてきたけれど
そこへいよいよやって来たのは
一つ目の巨人がグルルグルルと
喉唸らせて涎を垂れ流し
一歩大きな音を轟かせ松明を見せつけ
また一歩大きな音を轟かせ
近寄ってくるその姿に正面切って
立ち向かおうとするのではなく
ただ呆気に取られて見上げたけれど
怖気づいてはひるみ圧倒されて
仰け反った背中で押したドアノブが
カチリとなって時を止めた
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