Airport/宮木理人
 
人物だけが、無事に家やホテルに辿り着き、こうして大切な人とテーブルに向かい合いながら、コーヒーを片手に会話をすることができる。だけれどなんだか、おれらのほうが、処理しなければならないものが多いのではないのか。

テーブルの上のカップをわざと倒して、中のコーヒーをぶちまけてみる。
広がったコーヒーが新しい世界地図のような形になった。
この世界のどこかの空港で今、爆弾が爆発したことを想像する。

君はいつの間にか席を立って鞄に荷物を詰め込みはじめ、パスポートを確認しているが、いや、ちょっと待ってくれ、おれは今、たった今、長い旅を終えて、ようやくここに帰って来たばかりだというのに。
テーブ
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