Airport/宮木理人
ーブルの上では先ほど倒した陶器のカップが転がって、床に落ちて割れそうになったところを、間一髪でキャッチして、ギリギリセーフ、と思ったその瞬間、おれの口からは、真っ黒で芳醇な香りのコーヒー豆が、フィーバーしたパチンコ台のようにじゃらじゃらと溢れ出し、目はチカチカと光って、カップのなかにじゃらじゃらと注がれて、ぼろぼろと零れだし、テーブルの下ではその零れ落ちたコーヒー豆に、無数の小さな機長たちがアリのように群がっていて、君はすっかり準備を済ませて大きなカバンを引きずりながら、おれの姿に構う事無く、そっけなく、家の玄関から出て行き、おれはいってらっしゃいも言えないまんま、じゃらじゃらと、溢れるカップに豆を注ぎ続けて、足下の小さな機長を払いのけながら、目をチカチカとさせ、繰り返し、繰り返し、じゃらじゃらと、していて、
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