夢(ニ) 部分/沼谷香澄
 
聞けばいつも子ども心にさえ目先の情報に踊らされていると思わざるを得ないものでしかなかったが)。
戦争中の子どもの夢は「生き延びること」。その夢を父は大きく果たしたのだ。(他の夢を抱き得なかった哀れな者たちよ!)蔵書?土蔵?とんでもない。そんなものの持てる暮らしなら昭和の時代に口減らしのために奉公に出されることもなかったであろうに。}柘榴 桑 アケビ 木苺 蛇 蛍 鼠 足高蜘蛛 鉦叩
お父さんおめでとう夢はかなっていたんだね。
パキラパキラ 花が咲いたと お勝手のうすら湿った噂話と
猫が異臭を気にして後脚を舐める。勝手口の扉の外には私が腐らせた貝が捨ててある。
左手の指と肘とを蚊に食
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(2)