昔の、話(愛のテーマ/虹村 凌
事は、その言葉で相手の何処かを縛る事だと思う。
だから、俺はあまり言いたくない。言わないだろう。
心も愛も要らない。今は、愛なんて重くて苦しいだけだ。
俺は日々の課題をこなす事で一杯一杯だ。余裕が持てないよ。
思い出した。彼女は言ったんだ、俺の事なんかちっとも愛してなかったと。
そう、愛なんてなかった。俺の愛だけがあった。そうだった。
でも、未だに謎に思っている事がある。
俺は初めてアメリカに行く直前に、俺は彼女と会った。
成田駅で、だ。彼女は彼女の香水を、俺の辞書に吹き付けた。
あの行動の意味は何なのか。今も、幽かに、その匂いは残っている。
愛なんてなかった。
殺し
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(4)