NOBUKO/吉岡孝次
って近くに軍艦島が見えるけれど
焦点を合わせるのは案外難しいことです
幹線道路は島を巡り
岩場に停めた自動車の中で恋人たちは腰をうねらせていましたが
保育園、商店街、組合集会所
僕は余所者だからあなた方には共感しません
そうして中腹の児童公園で
少しでもいい、深くなってくださいNOBUKOさん
卑俗な感傷性から愚鈍な教条主義から
白い指で良質炭を掻き出してください
麦わら帽を手で押さえながら
身振りを交える僕へと内実を 傾けて
「僕はね、ハッピーエンドが欲しいんじゃないんだ。
とにかく、明確な発端。これだよ、僕に必要なのは。」
「きみがヘーゲリアンだとは知らなかった。」
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