羽音の思惑(かべのなかから)/ホロウ・シカエルボク
 
に俺は問いかけた
蜻蛉はさっきまでの記憶を失くしたみたいに羽を震わせて去って行った
洞窟の入口は釣鐘のような形状で、少し腰をかがめれば大人でも楽に潜れるぐらいだった
俺は迷うことなくその入口を潜った、このまま路を歩くよりずっと面白そうだったから
スマートフォンのライトをつけて行けるだけ行ってみようと思った
穴は広くも狭くもならず、同じ姿勢のまま一時間ばかり歩き続けた
そこからは少し傾斜がきつくなり、どこかから水が流れて来ていた
危ないかもしれない、と思った矢先だった、スニーカーの靴底は濡れた岩肌にさらわれ
洞窟の遥か奥まで滑り落ちた、スマートフォンはどこかで手から離れた
どれぐら
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