羽音の思惑(かべのなかから)/ホロウ・シカエルボク
 
ぐらい気を失っていたのか、気づいたときには漆黒の闇の中に居て
水が流れる音を聞いていた、しばらくそれを聞いていたがやがて動こうとして
身体の自由がまるで効かないことが判った、首だろうか?麻痺しているようだった
それはもうどうあがいても助からないことを意味していた、あれから…
あれからどのぐらいの時が流れたのかもう判らない、長い年月をかけておれは死蝋化し
さらに長い年月をかけて周辺の岩に溶け込んでいった、そのとき
数人かの意識がおれの中に流れ込んでくるのが判った、ああ、おれだけじゃないんだ
蜻蛉よ、おまえはいつからここでこうしているんだ
おれはどこか近くに居るのだろうやつにそう問いかけた
微かな羽音が辺りの空気をくすぐった、またいつか
やつが連れてくる誰かがおれたちの上に積もるのだろう

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