羽音の思惑(かべのなかから)/ホロウ・シカエルボク
 
るものを誘うためにある
失われた路の向こうに、おれを待っているなにかがある
もしも急いだら世界を乱してしまう気がして、葬列のように歩いた
荒れた舗装の上、狂ったような真夏がのた打ち回っている
顎の先から汗が滴り落ちる、すでに汗をまとっているような上半身
片手にぶら下げた水を一口飲むと、それが通過していく内臓をはっきりと感じる
どこから来たのか知っているのに、どこが到達点なのか判らない、それだけで
漂流しているみたいな気分になる、そういう種類の心許なさ
ウンザリするほどに緩やかなカーブを曲がりきると一匹の蜻蛉がホバリングをしていた
俺の姿を見ると、「待っていた」とでも言うように大き
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