羽音の思惑(かべのなかから)/ホロウ・シカエルボク
 
なマグライトを出して照らしてみると
歩けなくもなさそうな一本のラインがあった
そのままトンネルの中へ足を踏み入れる、光が届かなくなるところで
まとわりつく空気はがらりと変わるのだ
少しだけぬかるんだ足元を注意深く歩いていると
いつからか過去が語りかけてくる、それはいつも決まって
とうに忘れてしまっていた些細な出来事で
時々立ち止まってなんとかその日付を思い出そうとするけれど
記憶の壁に掛けるカレンダーなどどこにもないのだ
時折吹き抜ける風は埃っぽく、閉じ込められた時が錆びついている
コンクリートをすり抜けてきた水滴が溜まりの上でステップを鳴らす
リズムは上手くない、だけど、そ
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