遠い世界の夜/ホロウ・シカエルボク
時間は腐るほどあった、床に俯せになったままピクリとも動かなくなったそいつの美しい頭髪をひと掴み右手に巻き付けて力を込めてゆっくりと引っ張ると、やがて強情な雑草が抜けるみたいにごっそりと取れた、毛根には血が滲んでいて、そいつが引き抜かれた頭皮からも幾筋かの血が流れていた、(まだ血が出るのだな)と俺は思った、もう人でなくなってから随分と時間が経っているのに、まるでまだ蘇生を目論んでいるかのように血が通っているのだ、俺は鼻で笑い飛ばした、お前はもう生き返ることなどない、こうして次第に腐敗していくのだ、そう、時間は「腐るほどある」、つい先週どこだかの浜で丁寧に焼いてきた小麦色の肌を眺める、爪を立て
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