遠い世界の夜/ホロウ・シカエルボク
 
立てて引っ掻いてみると鮮やかに痕が残る、そしてまた血が滲む、なんだか楽しくなって一時間ばかり引っ掻き続けてしまったのだ、おかげでお前の身体はどこかの茨の藪を潜り抜けてきたかのように擦り傷だらけになってしまった、そのうちのいくつか、ひときわ力を込めたあたりからは赤黒い血がどくどくと流れている、ゴキゲンだ、毛髪を両手で掴んで頭を持ち上げ、手を放す、ごとり、という、ボーリングの球を落としたような音があたりに反響する、ははは、と俺は声に出して笑う、もう一度同じように持ち上げて落とす、ごとり、と音がする、俺は爆笑する、ゴキゲンだ、本当にゴキゲンだ…十五回目にそうした時に鼻骨がいかれたらしい、床に突っ伏した顔
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