妻の夫/渡辺八畳@祝儀敷
 
いる
妻のほうは掛けぶとんが広げられている
中に誰も寝ていないので平らだ
掛けぶとんのカバーは緑の市松模様
なんとも古臭いデザイン
サザエさんにでもでてきそうだ
私はふとんの上に黒電話を乗せ
妻の連絡を待っている
シーツの上の黒電話は
カマドウマの目のよう部屋を反射している
私がひしゃげて写っている
ひとりじゃ食パンも焼けない
カマドウマが足をこすり合わせた
下品な音が寝室にも伝わってきた

妻は牛乳配達に挨拶しようとして天地が正反対になってしまっている
妻は横断歩道の白線にぶら下がって懸垂をして運動不足を解消している
妻はクリーニング屋の店内で洗われたスーツ達に
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