妻の夫/渡辺八畳@祝儀敷
 
達に巻かれ団子になっている
妻は銀行の受付で整理券を発行したまま週刊誌に頭をすげ変えられている
カマドウマといっしょに妻を待っている
黒電話はケーブルが部屋の外に伸びたまま一回も鳴らない
長時間のあぐらで足もしびれてきた
カマドウマの触角が先祖の写真にさわる
写真がすこし傾く
だけど先祖の顔はまったく変わらない
私は妻を待っている
電話は鳴らない
ひとりじゃお茶も湧かせない
ふとんの上で待ち続けるしかない
カマドウマがまた足をこすり合わせている
妻はまだ帰らない
戻る   Point(3)