どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
息をついた―もちろん、そういう感じ、ということだ。彼女にはつくべき息がないのだから。
「なにがあったのですか?沙織ちゃん?」
彼女はおどけてそう問いかけた。もうなにが起こっていても構わなかった。それをどうこうしたからといって、腐敗が始まった自分がもうこの世界に留まれるなんて思っていなかった。むしろそれはありがたい出来事だった。この世界は人間が人間として生きるところじゃない、彼女は常にそう感じていた。もちろんそれは若さ故の認識の甘さというところもあったけれど…この歳でそこから脱却出来るのはむしろありがたいことだと思っていた。だから、彼女は霊魂と化した自分を存分に楽しんでいた。少しの間彼女は自
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