どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
 
彼女は、自分を縛り付けるものがなにもなくなったような気がした。試しにその場で身体を伸ばしてみると、ふっと肉体の外に出ることが出来た。えっ、と驚いて自分を見下ろしてみると、腐敗が進んだらしく、髪の毛が抜け落ちていた。頭頂部から溶けるように、それは始まっているようだった。気温が低いせいでいままでかかったのだ。彼女は自分の死体の前面に回り、顔を覗き込んだ。頬にいくつか痣のようなものが見受けられた。死んでから出たものではないみたいだった。明らかに殴られたものだった。やっぱりなにかが起こったのだな、と沙織は思った。半開きの自分の目を見た。「私は不幸です」と書いてあるような目をしていた。ふう、と彼女は短い息を
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