どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
 
嘘ばかりだ、と陽平は思いながら、ぼんやりと彼女らを眺めていた。まったく印象に残らない数曲が終わり、客を巻き込んだイベントが始まった。撮影会だのなんだの。陽平はそのイベントにはまるで関わらなかった。痴呆症のように虚ろな目で嘘つきな女たちを眺めていた。イベンターらしきスーツの男が明らかに陽平を警戒していたが、彼自身はそんなことにまるで気づかなかった。ルールの判らないコール&レスポンスが始まったところで、陽平は席を立ってそこを離れた。確かに他になにもすることを思いつかなかったけれど、それでもそこにいる理由なんてなにも思いつかなかった。


 一週間と少し経過したころ、沙織に変化が訪れた。不意に彼女
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