どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
 
かないところでいろいろなことを感じて、そのたびに心は動いていたのだな、と、そんなようなことを考えた。ここで、彼女に名前を与えよう。彼女の名は沙織という。


 河原の建物の側には二つの轍があった。もちろん、草に覆われていてすぐにそうと目に留めることは不可能だった。それはつまり、誰かが彼女を車でここに連れてきたのだということを意味していた。沙織は車どころか、運転免許すら持っていなかった。第一、彼女が自分でそれに乗って来たというなら、その車はそのままここになければおかしいのだ。それが誰なのか、いまとなってはどれだけ探しても見つけることは出来ないだろう。もちろん、沙織自身がなにかを思い出すとか、そ
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