誰も思い出さないその雨のことを/ホロウ・シカエルボク
 
ゃないか?なぁ、シャワーを浴びたか?顎に流れた水を拭いながら考える、起きたばかりだ、もちろんまだだ…浴室には昨夜洗い流したものたちの残留思念がアメーバのように張り付いている、モダンな浴室が欲しいな、と俺は考える、そうすりゃタイルの目地にこんなものがへばりつくこともないのに―いつからか、髪を、身体を洗う間、目を閉じているようになった、そこにどんな理由があるのかなんて考えたこともない、ただ、「それがいつからか」少しも思い出せないってだけの話だ…いくつもの古びた細胞を下水溝へと葬って身体を拭き、服を着る、清潔なものを身体にまとっていると、いつもどこか少し嘘をついているような気分になる、つまりそれが、ミネ
[次のページ]
戻る   Point(3)