宮沢賢治メモ3?「答える」という在り方/石川和広
 

しかし「永訣の朝」で、妹に「アメユジュトテチテケンジヤ」=「賢治、雪をとってきて」と言われて「さいごのたべものをもらっていこう」と「答える」詩を書くとき微妙である。
というのは、これは「死人にくちなし」の詩で、ふたりの関係で閉じているからだ。独白に近い祈りとも取れ、「かなしみ」もわかる。しかし、妹は「雪」をとってきてもらうのではなく、何かもっと賢治の想像するのとは違う、言葉の交わし方がしたかったのかもしれない。もっと云えば、死の床にいて、もう死にゆく現在を「外に出られない」という否定形ではなく、「賢治外に出て行って」という別離の挨拶だったかもしれない。

 賢治もそう思っている節がある
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