グラン・ギニョール(ただし観客が皆無の)/ホロウ・シカエルボク
 
ない、きみの腕にはべったりと腐敗臭がへばりついている、きみは唇を?む、強く噛み過ぎて血が滲む、それがきみに出来る唯一の抵抗だった、窒息の予感、どろりとした、蝋のような空気がきみのまわりで密度を濃くしていく、それはきみをよりいっそう渦の中へと沈めていく、きみの体内のあらゆる隙間に、重苦しいものが流れ込んでくる、それにはどんな味もない、どんな温度もない、どんな刺激もないし、だからといって優しくはない、きみが暴れてもがくほどに、それはきみの体内の奥深くへと流れ込んでいく、だれにも犯されたことのないきみの内臓の奥深くへ―きみはせめてと目を見開くものの、なにも見ることは出来ない、まぶたと眼球のわずかな隙間に
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