闇夜/アンテ
 
平をもらしたが
よくよく考えると
眠りのさまたげになる程度の害しかなく
開き直って全部食べつくしてしまった
老いた女だけが騒ぎと無関係に
暗闇の欠片を庭の畑に植えて毎日世話をし
やがて畑じゅうに黒い花が咲き揃うと
花の種を収穫して街の端に植えた
すると夜空が低いところから暗くなりはじめ
ついには完全に暗闇がもどった
人々は無邪気に喜び
さすがに無計画に暗闇を切り取りはしなかったが
こっそり盗む人があとを断たなかった
老いた女だけが騒ぎと無関係に
昼間の空をほんの少し切り取って
畑に撒いて育てた
やがて庭じゅうに明るく輝く花が咲き揃うと
ひとつずつ取っては空に放ち
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