降り積もったばかりの雪に覆われた萱野高原には/金槌海豚
 
ように吹き抜ける風に乗って雪が舞い上がる

自分の足音が ただそれだけが ひどく大きく腹に響く
雪の層は私が歩みを進めるたびに 私の重さに耐えられずに
その菱形異形の結晶を破壊しながらひと息に折りたたまれていく
靴底には、ハコベラ、ペンペン草といった者たちの
微かな息遣いの形跡が伝わる
かつてそこに何があったのかをその者たちは覚えている

私が歩みを止めたとき それまで吹いていた風も止まり
自分の心臓の鼓動が聞き取れるような静寂のほんのひととき
私は視界を遮断して 自分の息遣いの音と空気の匂いとから
私のものではないもう一つの個性の姿を景色の中に映し出した

ココ、ココ
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