いつか見た映画みたいに/ホロウ・シカエルボク
 
朧とした意識の中で聞こえる彼の肉体の悲鳴そのものだった。オオ、オオ、俺の指、俺の指が食い千切られていく、オオ、食い千切られて、ポリバケツの中へ―いくつもの俺の指がそこに捨てられている、血塗れになって―もうどんなに懸命に働いてもそのイメージは消えなかった。ヨシオは事務所にも行かず、仕事場の隅で壁にもたれて眠るようになった。二十一日目の夜に、ヨシオは絶叫と共に自分の指を食い千切った。声を聞きつけた厨房のコックが洗い場に入ってみると、うつろな目をして自分の人差し指を食っているヨシオを見つけた。すぐに救急車が呼ばれ、警察が入り、ヨシオの仕事の状態が明らかになり、施設の食堂は操業を停止され、別会社によって再
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