いつか見た映画みたいに/ホロウ・シカエルボク
 
えて夕食を作ってみても、ヨシオは疲れ果てて帰ってこれない日すらあった。どうして彼がこんな目に合わなければならないのだろう。キヨミは一人食卓で伏せたままのヨシオの茶碗を見ながらそんなことを考えた。十六日目の午後のことだ、その前日もヨシオは事務所の簡易ベッドでギリギリまで眠ってから仕事に入った。疲れはピークに達していた。目は霞み、肩は痛み、膝は力を無くして震えていた。残飯を捨てていたヨシオは、自分の手がケチャップで汚れている瞬間を目に止めた。皿に乗っていたのは、半分だけ齧られたウィンナーだった。まるで俺の指が千切れてしまったみたいだ、ヨシオはついそんなことを考えてしまった。いつもならちょっとした冗談で
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