いつか見た映画みたいに/ホロウ・シカエルボク
それは二人が二十代の半ばのころのことだった。二人はほどなく一緒に暮らすようになり、ヨシオは二人がなんとか暮らせるようにと今の仕事に変わった。ある日、膨大な残飯を捨て、指がひび割れだらけになるまで洗い物を済ませた帰り、社長室に呼ばれ、来月は休みなしで働いてくれないかと頼み込まれた。ヨシオはそれほど仕事が好きではなかったが、人手が足りず(それはひとえに社長が原因の一端なのだが)、誰かが無理をしなければ仕事が成り立たないことも理解していたのでそれを了承した。社長はすまん、と頭を下げ、来月は特別にボーナスを出すから、と約束してくれた。ヨシオは家に帰ってキヨミにそのことを話した。キヨミはヨシオが普段から無理
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