春は皮下に萌す/はて
ユトリロの白の時代の終焉は
小さな教会を過ぎ
角を曲がれば
景色が変わり
曇りかけた空 薄暗い白壁が
もう見えなくなっただけのこと
かもしれない
道を挟んできょうかいと向き合い
キャンバスを立てる
描き終わった後に選んだ行方は
通り過ぎた
声や匂いに引き摺られたの
かもしれない
冬眠から目覚めると辺りは残雪が多く
所々剥げてむき出しの土もしらけている
正確には枯れている
仰ぎ見る空に
ため息を浮かべると
きらきらと光っている
風邪をひいたのか怠けているのか
鼻はきかず
ぼんやりと
穴を掘るしか
生 ものを 食 ものを探す術はない
春はまだ遠い
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)