のぎへん/AB(なかほど)
 

地べたに残された線香花火があと3本


彼女は意を決して走り出すのだが
決まっていつも
こおろぎが鳴き出し
それから
道のまん中に崩れてしまう


とんぼかげろうひがんばな
と何回唱えても
僕の鼓動は少しずつ速くなって
よくあることさ
とつぶやくと
君は翼で空をひとつたたいて
すいと方角を変えて行く


卵を産もうとするシャケは身が白くなる。まずまず白くなっても味は変わらないと思うのだが、それでも紅いほうが美味しそうに見えると、おじさんは卵を取り去った腹に紅麹をなぶりつけて、物干竿に吊るす。


すまぬ
全ては同じ命とはいえ今日も耕す
ただ
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