婚姻/オダカズヒコ
 
う彼女の顔には
もう
伴侶の様な
相が宿されていた
それほど強い刻印に
であったことなど
なかった
約束など
一度だって
したこともない筈なのに
揺るぎのない確信が
ぼくらの間には
成立していたんだ

人生は
秘密に満ち溢れていると
中年になり
ぬけぬけと思うようになったのは
きっと
運命の恋を
したせいだ

この人はきっと
ぼくを生かすために全力を尽くすだろう
何か根の生えた
どっしりとしたものが
身体の中を駆け巡る
ぼくは
何も考えない
たった今
彼女がプレイヤーとなった人生を
歩き始めている

自分の中に
誰かが存在し始める
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