死活/飯沼ふるい
 
に。





着信音で意識を取り戻す。まどろみから抜け出しきれぬままに通話ボタンを押して「はい?」と寝ぼけた調子を隠しもせずに相手を問う。

スピーカーの向こうから「きみ」の葬儀の日取りを伝えてくるのは昔付き合っていた女だ。
女の、重力そのもののような重たくのっそりした声に押し潰されて瞼を開くこともままならない。手探りで卓袱台に置いたはずのライターと煙草を取る。ライターを摩擦する音をマイクが拾いあげたか、嫌煙家の女は黙りこんだ。
煙草を肺の奥深くへ充填させる。眩暈を感じるまで息を止める。吐く。ねばついた口腔から漏れ出る煙は電灯の紐に絡まりもつれながら消えていく。こめかみが脈
[次のページ]
戻る   Point(2)