ビューティー・メッセージ/カンチェルスキス
ボロだ。確かなのは、何とか息をしてることと、お天道様だけまだ正気だってことだけ。ずいぶん遠くまで来た。この世でたった一人とはこういうことなのか。独り言さえ言い始めた。せめてこの自分の経験を誰かに伝え、一人でも多くの悩める魂の手助けになりたい―。なぜなら、本人だけではない、その人の周囲には本人以上に悲しんでる人間がいるのだ。
こんなことぐらいしか自分にはできない。それこそが、自分がこの世に生を受けたたった一つの意味らしきものなのかもしれない。ゴミ捨て場で拾った文字の消えかかった看板に、どんなことがあっても手放さなかった父親の形見のマジック『極太マッキー』を握り、彼は力いっぱい書き記す。意識はない
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