ビューティー・メッセージ/カンチェルスキス
 
ない、もう一心不乱だった。
「酢を垂らすと、思いのほか、焼きそばはさっぱり仕上がります 店主敬白」
 うっかり彼はそう書いてしまった。定食屋を営んでた頃の記憶が、ふと、蘇ってしまったのだ。
 ちょっとしたバスの待合所の隣まで這うように進み、看板を立てかけると、彼は力尽きた。いや、ただ眠っただけかもしれない。安らかな表情だった。
 その横には、偶然にも、もう一枚の看板が立てかけられていた。まだ新しかった。
「朝散歩ラジオ体操は美の秘訣 60代女性」
 みんなに知ってもらいたくて、彼女は夜中、それをこっそり置いた。





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