佐峰存詩集『対岸へと』について/葉leaf
 
こに、詩の生み出すコミュニケーションの特異性が生まれる。通常のコミュニケーションは言葉同士のやり取りであって、言葉でもって何となく合意が得られればいい。言語行為のやり取りで互いに行為し合い、適当な落としどころを見つければいい。
 だが詩のコミュニケーションは、言葉よりも根源的な実存のやり取りである。ひとまず詩人の実存が、詩人自信を経て読者へと引き渡される。読者もまた臨床的な空間で、己の実存に立ち返って詩人の実存に応答しなければならない。これは論理でつじつまを合わせれば済むという問題ではなく、互いの気配やしぐさを感じ取ったり、互いの声の肌理を繊細に受容したり、そういう存在の全てを賭けたコミュニケー
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