佐峰存詩集『対岸へと』について/葉leaf
 
出して言葉を受け入れるのだ。歓待――ホスピタリティの空間が詩の受容においては成立する。

私とあなたの影は忙しなく
気配に割られた道路をわたり
坂を上がる 彼方で曲がり
行方が分からなくなる
屋根の一帯からは
見慣れない白いアパートが
産声を上げている
      (「影のすむ街」)

 ここで佐峰存の詩集『対岸へと』(思潮社)を読んでみよう。佐峰は一見風景を淡々と描写しているように見える。そして、読者はそこに描かれた風景をただ視覚的に見ればいいかのように思われる。佐峰の詩は一見視覚だけで処理すればいいかのように思われるのだ。
 だが、実は佐峰の視覚的な詩群もまた、視覚モデ
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