チューしてあげる/島中 充
とみんな言い当てるのだ。そのことをお母さんに尋ねると
「困ったわねー、それって音痴っていうのよ」と答えた。
担任のオンナ先生は競争させるのがすきだった。四十二名の生徒を六人ずつ七つの班に分けて、掃除や毎朝行われるドリルの小テストを、班ごとに競わせた。テストはその班全員の合計点を棒線グラフに書いて、模造紙を教室の壁にはった。ぼくの班はその点取り合戦でビリだった。それはケイコがいるせいだ。ケイコの通信簿は見なくても、誰もが知っている。一本槍を持ったあひるがいっちに、いっちに、と行進しているのだ。ケイコはにたっと笑って、手も足も出ない、手も足もないだるまだと言って、零点のテストを、ぼくに提出して
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