チューしてあげる/島中 充
 
青白いお祖母さんの死に顔を見た。おしろいが白く塗られ、口紅が赤く、口や鼻孔に白い綿が詰められ、気味悪く鼻の穴や唇の隙間から白くのぞいていた。もうニンゲンではなかった。ひとりでこのように花に囲まれて青白く死んでいくのだ。ニンゲンはひとりで生まれ、ひとりで死んでいくのだ。ひとりぼっちなのだとわかった。なぜだかさびしくってしかたなかった。ニンゲンはひとりで死ぬんだ。だから生きている間だけはひとりぼっちになりたくないと思った。ぼくを愛してくれる親兄弟がいる。仲良くしてくれる友達や先生がいるはずなのだ。でも自分はひとりぼっちのような気がしてならなかった。自分はひとりぼっちではないのだと思いたかった。先生や友
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