チューしてあげる/島中 充
こうしろと言われたように右往左往している。おはようだけならまだしも、今までのあいさつと同じだが、ナカムラくん、くんまで付いていた。ストーブの輪がいっせいにぼくを見たのは、ケイコの大声のせいではなく、ぼくの事がついさっきまで、そこで話されていたからに違いない。ああ、もうだめだ。ああもうだめだ。言い付けられたに決まっている。ストーブでほてったケイコの顔が大きくふくらんで、目の前にせまってきた。鼻を垂らした赤鬼になっていく。
先生が来て授業が始まった。ケイコがストーブから隣の席に来て座った。もう言い付けられたのだから、今さらあやまっても仕方のないことだ。どうせ叱られるのだから。どうせみんなも知っ
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