チューしてあげる/島中 充
 
浜に打ち寄せる波のように繰り返し、繰り返し、一晩中、後悔が押し寄せてきた。なかなか寝むれなかった。言い付けられる。言いつけられれば、先生から委員長のくせに、なんと言う野蛮な事をするんですか。委員長のくせに、恥を知りなさい。ぼくはきっと委員長のくせにと言われて、叱られるだろう。ホームルームの時間に、黒板の前に立たされて、ケイコにあやまりなさいと、先生は言うだろう。そして、ぼくはいつも馬鹿にしていたケイコにごめんなさい、と頭を下げるだろう。ぼくの方から手を差し伸べ、握手させられるに決まっている。そんなさる芝居はいやだ。十一年間、生きてきた中で一番恥ずかしいことだ。クラスのみんなは、ケイコをなぐるなんて
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