チューしてあげる/島中 充
なぐったことを内緒にしてもらうために、ぼくはあやまっておかなければならなかった。ぼくはそうじが終わったことを先生に伝えた。どうにかしてケイコをごまかせないかと、まるめこめないかと考えながら急いだ。追い着こうとケイコの後を追った。ケイコの家の前まで来ると、すでにケイコは、土塀の前を通るはずのぼくを待ち構えていた。松の木に登り、枝分かれしているいつものところにいた。いつもとちがって、仁王立ちにそこに立っていた。そして、言った。「あした、先生やみんなに言い付けてやるからな、今度は許せへんで」ケイコは怒れる猿のように枝をおもいきりゆさゆさゆらしながら宣言した。
あんな事をしなければよかった。砂浜に
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