チューしてあげる/島中 充
 
りが舞った。不意にぼくは気付いた。言い付ける。ケイコが泣き叫んで、先生に言い付けるのではないか。言い付けるにきまっている。教室ですでに泣いていて、もうひとりの当番が水くみから帰って来て、わけを聞き、今頃、オンナ先生を呼びに行っているかもしれない。後悔が目に入る砂ぼこりのように襲ってきた。ケイコをなぐったことに、後ろめたさが湧いてきた。たいへんなことをしてしまった。あれでもオンナだからな。なぐった感触が、手にまだ残っているような気がした。そんなにきつくなぐっただろうか。なぐった覚えはないんだ。きっと、そうたいしたことはないんだ。都合のよい方へ、よい方へ、ぼくは考えようとした。頭の中が混乱していた。ケ
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