チューしてあげる/島中 充
ばよい。何もできない、テストでいつも班の足を引っ張っているケイコがやればよいと思っていた。そのうえ、ぼくはクラスで先生の次にえらいニンゲンなのだと思っていた。これをしろ、あれをしろとその場で監督するだけで許されるのではないだろうかと思うずるい心もあった。リーダーとはそういう意味にも理解していた。今までから、ケイコは飛び跳ねるように、ぼくから言われる通り掃除していたのである。
三名が休んでいるため、その日ぼくは、ケイコにいつもよりたくさんの命令を出した。
「机を引け。床をはけ。黒板を拭け」その間ぼくはいつものように
「黒板消しの掃除だ」と言って、窓の外に両手を突き出して、二つの大きな黒板消し
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