チューしてあげる/島中 充
誰もが知っていた。ぼくのいない所で、ぼくの悪口を言う時にだけ、青れき岩が、赤れき岩が、と隠れて使われた。だがケイコだけは違っていた。あの松の木の上で、下を通るぼくに、スカートから白いパンツをのぞかせて、
「おい、れき岩」と、呼びかけるようになった。怒り狂っている赤れき岩に、以前のように口笛を吹いてごまかす余裕などなくなった。ぼくはケイコに仕返しをしてやる機会をねらっていた。木の上の猿に、いつか誰も見ていない所で、これがれき岩だと言うげんこつをくらわしてやろうと、ねらっていた。
4
三学期の北風の吹く日、ぼくの班は一年生の掃除当番であった。幼くて、自分たちで掃除出来ない一年生
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)