チューしてあげる/島中 充
 
色黒にやせて、ほお骨が張り、目立ったそばかすの有ったぼくは確かに、自分でもれき岩に似ていると思った。そして、自分がそう思ったことに一層腹を立てた。そのうえ、大爆笑の中に、ぼくはみんなの悪意のようなものを嗅いでしまった。委員長であり、リーダーであるぼくだからこそ、みんなは人一倍、先生までもがこのことで、涙を浮かばせて喜んでいるのだと思った。ぼくはケイコににえ湯を飲まされたように腹を立てていた。
 以来、ぼくのあだ名はれき岩になった。かっと頭に血がのぼった時、ぼくは赤れき岩と言われた。血の気が引いて青くなった時、ぼくは青れき岩と陰口をきかれた。そしてそのあだ名をぼくが快く思ってないのは、クラスの誰も
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