舞の涙/オダカズヒコ
無神経にゆがんだような
舞の両腕の力が
僕の背中を彫刻刀のようにつかみ 握りしめ
そして彼女は自分自身の身体の中に
僕を押し込めようとしていたような気がした
それはとっても
時間をかける必要のあることのはずなのに
舞ってば 一分一秒をそれを急ぐように
何度も僕の背中に
力を込めていた
「痛いよ」と
僕が言って ふたりが身体を突き放すと
そこにはとても空っぽな
空間が広がっているような気がして
痛ましかった
形だけタオルを胸に巻いて舞は
太もものアザをさすりながら
この夏 最後の海だもの
うんとたくさん
あしたは泳がなきゃ
そう言って
テレビ
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