舞の涙/オダカズヒコ
 
レビをパチンとつけて観ながら舞は
「うんうん」ってひとり 
頷いている彼女がいた

「舞はね
 昔からこの世界を知って
 生まれてきた気がするの
 ずっと不幸を
 背負ったまま死んでいくことも
 わかっているの

 でもね
 たったひとつだけ
 生きてきた証を残して
 死んでいきたいの

 ただそれを
 一緒に探してくれたり
 体験してくれたりしてくれる
 ボーイフレンドが
 欲しかっただけ」

そう言って
少し日焼けした横顔の舞は
顔も上げずに
肩をぐずぐずさせながら
浜辺を見下ろす海みたいに
泣いていた
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