夜の山道(二バージョン)/山人
一途なおもいだけが、私をこうして山に繰り出させ、闇の中の登山道を歩いている。
頭をよぎる冷笑を、振りほどこうとするでもなく、私は私の意に任せ、山道をただ歩いている。
何も問題はない。
こうして私は山に入り、そしてこの夜の山を歩いている。
起伏のある静かな稜線はうっすらとその影を晒している。
そしてその上には星が散りばめられ、欠けはじめた月が頂きを照らし始めた。
二、
日が暮れ、夜になると言うのは、実は一瞬である
と言うことに気がついたのは最近だ。
空間は凝縮され、ついには何もなくなる。
色彩はすべて黒く塗りつぶされる。
凡庸な野鳥どもは何処かに
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