夜の山道(二バージョン)/山人
かに失せ、
頑なで、入念な鳴き声が闇に放たれる。
なぜ誰も闇鳥という名で呼ばないのだろう。
ヨタカは孤独に浸り、闇を祝うように訥々と鳴き続けている。
山道の草の葉のそれぞれが、
その日一日を回想するように、
夜露を揺らしている。
その葉脈の体液は今、
静かに夜の音を聴きながら寛いでいるのだろう。
深山の一角の稜線を、山道を、深夜、
私は一人で歩いている。
遠くに見える夜景が美しい。
醜さと、欲望の塊がゆらゆらと発光し、
偽善者のような美しさを具えている。
その遠い明かりから私に注ぐ視線は皆無だ。
ときおり、風がとおる。
見えない風の道があるとする。
そして風は意図して吹いているのだと気づく。
その風が皮膚をこすると、
細菌が剥がれ落ち、再び私に生気が戻る。
この世に私のような者は、私だけだと知る。
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