私小説/がらんどう
学者がいたが、俺は暇ではあってもそんな消費とは無縁だ。顕示すべき相手なんてどこにもいないのだから。そしてダイレクトメール会社と同様に郵便配達夫もまた雪の中で配達を行うくらいには勤勉だった。宛名も送り主も記されていない郵便物を届けるくらいには。
それは誤配というやつだった。いくら日本の郵便局が有能であったとしても誤配の可能性はゼロではない。ゼロではないということは、それはあるということだった。極小であることとゼロであることは違うのだ。それに、それを届けたのは日本の郵政省とは無縁の人物だったのだし。当然それが誰なのか俺は知らなかった。俺は後姿さえも見てはいないのだ。それは剥き出しのままラベルも付
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