過去たちの春夏秋冬/水鳴ハヤテ
 
染めてゆく



  夏の風

木々の葉の影をなぞった夕暮れはゆらぐ砦にひと夏の風


  
  猫と蝉しぐれ


蝉時雨すだれを抜ける陽の入る朝の二畳で伸びしたる猫



  夏の終わりは


ひたすらに如雨露(じょうろ)で水をまく日常 夏の終わりと知っていながら

数えれば雨が多くて向日葵を描くことさえ忘れていた日

三杯酢少々なめてその味で知った夕日の澄んだかなしみ




【秋愁】


  秋桜

まだ残る夏の微熱をはかる朝百葉箱でコスモスを飼う

  すすき

好きなのはススキです。と笑むひとは遅れた秋に揺らめい
[次のページ]
戻る   Point(1)