過去たちの春夏秋冬/水鳴ハヤテ
 
めいている


  満月

散らかった部屋で見ている満月のなめらかな笑みそれだけの夜



ここのえの花

夜ごとにくる青こばみ部屋にいるただそれだけの九重の花



【冬夢】


  高空

冬を待つ空の高さを思うとき帰らぬこだまあると身にしむ

  

  初雪

くもりぞら迎える季節は重たいか 
  北では雪が近かろうとな



  夕暮の街にいた

冬靴で枯葉を砕く夕暮れの曲がり角には面影がいる


牛乳とたまごとバターとコンソメの匂いが胸をしめる夕暮れ


君は笑み笑にこのさきの三叉路で強く握った手を振っていた


さようならさえ書く場所がなかったか日暮れに届く木の葉一枚



  トンネル

入り口は夏金木犀通過して出口は白くまだかすみおり


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